専門家インタビュー

腰痛・肩こり・足の痛みの原因は「和式トイレ」を使わなくなったから!?

1日平均6322歩。

これが何の数字かわかるでしょうか?

日本人の1日平均歩数です。(厚生労働省「平成29年国民健康・栄養調査報告」)

約6322歩、日本人は1日に歩いているということはその歩数分だけ、足に負担がかかっているということです。

しかし、その「足」に対するケアを皆さんはできているでしょうか?

そんな「足の重要性」についてバスケットボールU-24日本代表のトレーナーとして活躍し、現在は鍼灸接骨院IWAMOTO院長として活動している岩本玄次先生に語っていただきました。

【PROFILE】

岩本玄次(いわもと・げんじ)


鍼灸接骨院IWAMOTO院長。「はり師・きゅう師免許」「柔道整復師免許」「日本体育協会公認アスレティックトレーナー(JASA-AT)バスケット」の資格を持つ。高校・大学・U-24日本代表など幅広い年代でバスケットボールのトレーナーとしての活躍。

幅広く柔軟に対応できるのが良くも悪くも特徴

ーートレーナーに興味を持ったきっかけを教えてください。

岩本:中学生ぐらいの頃、怪我をした人にコールドスプレーを持ってきて手当てをしている人を見て、漠然とトレーナーに興味が沸きました。そして、いざトレーナーを志した時、高校卒業後の進路として、将来困らないように手に職をつける方がいいという父親の勧めで、鍼灸の専門学校に通い始めました。

ーーどのような治療を専門としていますか?

岩本:接骨院での修行経験の後、バスケットボールのチーム専属でトレーナーをしていましたので怪我に対する正しい評価と、足首・膝・腰などの機能改善が得意です。

ーーU-24バスケットボール日本代表のトレーナーとしての実績もありますよね。

岩本:はい。また、鍼治療も行うので、東洋医学的に全身の繋がりを考えた治療も行っています。治療方法も決まったパターンにせず、疼痛の強いものには様々な物療も使いながら、症状や個人に合わせて、幅広く柔軟に対応できるのが良くも悪くも特徴かもしれません。

「和式のトイレ」を使わなくなった現代人



ーーここからは現代人における身体課題についてお聞きしたいと思います。まず率直に年々増加している腰痛や肩こりなどの身体課題についてどのようにお考えですか?

岩本:現代人の身体の課題を引き起こす大きな原因の一つとして挙げたいのが「姿勢不良」と「和式のトイレ」です。

ーー「和式のトイレ」と身体課題がどう関係あるのでしょうか?

岩本:よく言われることですが、現代ではトイレのほとんどが洋式の作りになり、和式のトイレは見られなくなってきました。そのため、現代人の生活において「しゃがむ」という動作が圧倒的に少なくなっております。

「しゃがまない」ということは足関節を大きく動かす機会も減るということなので、それが毎日のことになってくると、足関節の柔軟性が低下する一つの要因にもなると考えられます。



ヨガのポーズで「マラーサナ」といったポーズがあるように、下腿(脚)、大腿(太もも周辺)の筋肉の柔軟性の向上、腹筋、背筋、股関節周囲筋の筋力強化を目的としたエクササイズもよく行われています。「和式トイレ」でしゃがむ格好とよく似た動作であり、できた方がいい動作と言えると思います。

ーー柔軟性が低下すると身体にどういった影響を及ぼすのでしょうか?

岩本:下腿後面(脚の裏面)の柔軟性低下は、大腿部後面のハムストリングの硬さにも影響し、骨盤の動きが悪くなれば、それが要因で「腰痛」になる人も年齢問わずに多いように思います。

情報社会とアスリート

ーーアスリートに関して何か気になる点はありますか?

岩本:アスリートは身体のコンディションが競技のパフォーマンスに大きく影響する部分が大きいので、一般の方と比べて身体に気を遣う意識が高いと思います。今は情報化社会であり、意識や探究心の高い選手は特に、身体の課題解決に関する情報も自分で調べて実践してみるというアスリートも多いように思います。

ただ自分で考えてトライ&エラーから学ぶことは大切ですが、あらゆる情報を取得できるという反面、その情報が正しいかどうか、自分に合っているかどうかという判別ができず、情報をうまく扱いきれないという問題もあります。

ーー例えば、どのような例が今までにあったでしょうか?

岩本:例えば、腸腰筋(股関節の付け根)が大切だという情報をテレビやネットで見た選手が、股関節屈曲のトレーニングを頑張っていたのですが、腸腰筋よりも大腿筋膜張筋が有意に働きすぎて膝の痛みを発症させたというケースがありました。

また、肩を痛めた選手が、肩関節のインナートレーニングの必要性を感じて自分でやり方を調べて行っていたのはいいのですが、インナーマッスルではなく、アウターの三角筋にしか意識や感覚がいっておらず、全く別のトレーニングになってしまっているケースもよく見られます。

足指は自律神経調整のポイント



ーー先ほど足首の柔軟性が身体課題解決に重要だと仰られていましたが、特に足の重要性について先生の専門分野から教えてください。

岩本:現代において足は第2の心臓とまで呼ばれるほど重要視されています。私は鍼灸の資格を持っており、鍼治療は東洋医学であるため、東洋医学*の観点から解説させていただくと、足先は身体の末端の部位になりますよね?身体の末端には多くの神経が集まっているため、その末端に対する刺激は身体全体に良くも悪くも大きな影響を与えます。そのため、身体のどこかしらに課題を感じている人は足先をマッサージや鍼による刺激を与えてあげることによって、身体の悩みを解決することもできます。



【*東洋医学と西洋医学の違い】

西洋医学:身体の外から悪い部分へ直接対処するため即効性のある治療法。近年、先進国の医療機関では西洋医学が主流となっている。治療例)投薬や手術

東洋医学:身体の内側から治療する、あるいは病気になる前に防ぐ治療法。西洋医学に比べ治療に時間がかかるものの、身体にメスを入れず、病気を根本から治療しようとするため、西洋医学よりも身体に負担をかけない優しい治療法でもある。治療例)鍼や灸、あん摩、漢方薬など。

子供の靴選びの重要性

ーー靴選びや歩き方、姿勢などの観点から現代人の「足」にはどのような課題があると考えていますか?

岩本:私はバスケットボールの選手を診る機会が多かったのですが、その子供たちによく見られる足の課題は、成長を見越して自分の足よりも大きな靴を履いて運動していることです。そのような状態で歩くと、靴の中で足が遊んだ状態になり、足指を使う感覚が失われてしまいます。また、足の成長が止まったにも関わらず大きいサイズに慣れてしまい、ひどい人だと+2㎝の靴を履くが普通だと感じて正しいサイズ選びができなくなっています。そして、これは子供たちに限った話ではなく、大人の方にも言える話だと思います。

ーーよくある足の疾患やその疾患が起こる原因についても詳しく教えてください。

岩本:裸足で生活することがなくなったことで足指を使う機会がなくなり、足指に力を入れる感覚が弱くなっています。例えば、手をパーにして手指を大きく開いて通常の逆立ちはできると思いますが、手指を閉じて指をグーにしての逆立ちはいかがでしょうか?おそらくかなり難しくなり、ほとんどの方ができないでしょう。それは足にも同じことが言えて、足指がうまく使えないと言うことは足が地面に着く面積が小さくなり、バランスを取ることが難しくなります。

腰痛・肩こりの原因はここにあった

ーー上手く踏ん張れない状態で日常生活を過ごすとどのようなリスクが引き起こされるのでしょうか?

岩本:スポーツで言うとバランスが悪く、安定性がない状態で横の動きをすると、すぐ足首を捻ってしまったり、重心が定まらなくなります。それが原因でふくらはぎや腰に負荷がかかり、それを繰り返すことで慢性的疾患になってしまうこともあります。また、一般の方も同じで、うまく踏ん張れない状態で生活していると、足に大きな負担がかかって指や踵、足裏などに痛みを感じるようになってしまいます。また、姿勢が悪い状態で歩くことになるため、体のあらゆる部位で無理に支えようとして「腰痛」や「肩こり」といった足ではない部分にも痛みを感じるようになります。

ーー踏ん張れる状態になるにはどうすれば、いいのでしょうか?

岩本:足の成長は子供の時にほぼ出来上がります。そのため、子供の頃から裸足でいろんな場所を歩き、足に様々な刺激を入れることをおすすめします。自然と足回りの筋肉を使う感覚が身に付き、大人になった時には足に悩みを抱えることなく過ごすことができると思います。

先ほどの和式トイレも一つですが、田植えで田んぼを歩いたり、砂浜を走るなど、昔は生活の中で当たり前にあった足指への刺激が、やはり大事なのだろうと思います。大人の方ですでに足に悩みを抱えている方も、正しいサイズの靴を履くようにしたり、歩きをサポートしてくれるインソールにこだわることで今からでも改善していくことはできます。

アーチ維持が「鍵」

ーーインソールを履くと足に対してどのような効果が期待できるでしょうか?

岩本:現在は色々な種類のインソールが出ていますが、一つ言えるのは、立方骨に対してアプローチすることは扁平足がひどい方やアーチサポートを必要とする方に対し、非常に有効と言うことです。実際に私が担当していた選手に扁平足のひどい選手がいて、土踏まずを持ち上げるタイプのインソールを試しましたが違和感が大きく継続して使用できませんでした。

しかし、その後、立方骨を支えることができるインソールに変えたところ、違和感なく使用することができ、扁平足によって起こる疲れやすさや足の痛みが軽減されたということがありました。また、扁平足だけに限らず運動強度が高いアスリートは誰しもがアーチが崩れ、疲れやすくなることが考えられるため、インソールを使用し必要なアーチを維持することは非常に効果的だと言えます。

ーーインソールの選び方について教えてください。

岩本:一番は専門家に足の状態を診てもらうこと。自分で買う際、求める機能のインソールを買うことはもちろんだがそもそも靴のサイズが合っていないと意味がないです。足は積み木と同じで数多くの骨が複雑に組み合わさっている為サイズが合っていないと別の部位にアプローチしていまい逆にマイナスになる可能性もあります。まずは自身の足についてよく知ることが一番重要で、さらに足は生活環境や競技の強度によって常に変化していくため、定期的に状態を再確認する必要があと言えます。

地面を「掴む」インソール

ーー日常用インソール「TENTIAL ZERO」の使用した感想を教えてください。

岩本:最初使用してみるとインソールを入れた感覚が当たり前に感じ、安定感を感じにくかったのですが、試しに片足だけに【TENTIAL ZERO】を入れてみると、足指に重心がかかり自然と地面を掴めるようになっていることが体感できました。【TENTIAL ZERO】を購入された方は1週間、インソールを履いて生活した後にインソールなしで生活してみたり、私のように片足だけにインソールを入れて使用してみると効果が感じられると思います。逆にいえば、それだけ違和感なく自然と足に馴染むようなところも特徴だと感じました。

ーー使用前と使用後の体の変化について詳しく教えてください。

岩本:足指の動かしやすさを【TENTIAL ZERO】を入れてる時の方が圧倒的に感じました。足指が使えることで重心移動がスムーズになり長時間の立ち仕事や移動も楽になりました。特に腰痛や膝痛、肩こりなどの慢性的痛みを抱えている人には非常に有効だと思います。

ーー「TENTIAL ZERO」を履いて歩いた時とそうでない時の歩きの質はどのように変わりますか?

岩本:体重が前に乗りやすくなってくるので指をしっかり使って地面を蹴れる。意識してやろうとすると変なところに力が言入ってしまうが、重心移動がスムーズにできるところは大きな特徴であり、歩きやすさ、動きやすさを引き出してくれるインソールだといえます。

ーー従来のインソールとの違いは?

岩本:従来のインソールはアーチ部分が盛り上がっているため痛みが生じる場合があり、継続して使えないことが多々ありました。しかし、【TENTIAL ZERO】は立方骨を支えることで、無理にアーチを盛り上げず、違和感なく自然と必要なアーチを形成することができます。


ーー専門的な観点から期待できる効果を教えてください

岩本:扁平足でアーチが崩れてしまっている人や、脛骨が内に落ち込んでしまいシンスプリントになっている方に対してアーチを安定させることができるので、そういう課題を抱えている人には非常に適していると思います。また、外反母趾の方も荷重が上手くできることで、改善や症状を今以上に進行させないことができると思います。

ーーどんな人にオススメしたいですか?

岩本:基本的にこのインソールを入れて合わない人はいないと思いますので、アスリート・サラリーマン・学生など職業や運動強度に関わらず万人に対応できるものだと思います。履き心地を大きくは変えずに足のサポートを試してみたい人にはお勧めしたいと思います。先ほどの話のように、扁平足の強い方で、土踏まずを無理に押し上げるインソールが合わなかった方は、ぜひ試していただく価値はあると思いますね。


目標までの道筋を明確に

ーーどのように現在の経歴を築き上げたのですか?

岩本:話せば長くなるのですが、トレーナーとしてのスタート専門学生時代には地元(兵庫県宝塚市)の県立芦屋高校男子バスケット部を少しサポートさせて頂いていた頃です。サポートといっても自分の経験のために、仕事の休みの週末にテーピングやケアをお願いしてさせて頂いていたもので、一生懸命ではいましたが戦力にはなれていなかったと思います…。

そこでの経験の中で、高校総体の予選の際に毎年のように主力選手が腰痛で満足にプレーできない状況にありました。対処療法的なケアはしていましたが、力を出しきれないという悔しい思いをさせてしまっており、もっとチームと関わる時間が多ければ改善させることもできたかもしれない、そもそも予防エクササイズやトレーニングを徹底することで防げるものではないかと思い、フルタイムのトレーナーを目指すことにしました。

そして、トレーナーとして活動するからには自分の大好きな「バスケット」で、サポートするチームで「日本一」になりたい、「日本代表」に関わる仕事がしたいという目標を立てました。その目標を達成する為に何が必要か考えた時、半分は自分の技量だがもう半分は「運」と「人脈」だと考え、当時、日本代表トレーナーも多く排出していた関東学連トレーナー部会(現:医科学委員会)に所属する方法を考えました。
そして、関東大学連盟1部、2部所属チームに片っ端から連絡を取り、その中でご縁があり筑波大学男子バスケットボール部でトレーナーをさせていただく事になりました。筑波大でのトレーナーとしての活動を認めていただき、代表活動に関わる機会をいただき、トレーナーでも一握りの人しか経験できないであろう貴重な体験をさせていただくことができました。

この経験を地域の方々にも還元したいと思い治療院を開業することを決めました。

ーー開業後の活動は?

岩本:地元の方々や学生アスリートを治療するのはもちろんのこと、子供がケガをした時に、もちろん全員がプロ選手になるわけではありませんが、そのケガが大人になった時に影響しないようにしたいという思いは強くあります。

そのために、子供全員が健康に成長できるようにしたいという思いで治療だけでなく、予防やトレーニングを通して身体との向かい合い方も伝えていきたいと思いながら、『人生を良いものにするお手伝いができる治療院』を経営理念に掲げて活動しています。

それと同時に自分を育ててくれた筑波大学男子バスケットボール部に恩返しがしたいと思い、さらなる進化を遂げてほしいという思いから、現在は自分と同じように将来スポーツの現場でトレーナーとして働きたいと考えるスタッフを育成し、チームに派遣する態勢を作っています。

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パーソナルトレーナー(サッカー日本代表&J1選手)

鍼灸接骨院IWAMOTO院長